お母さんのお腹の中での体勢や向き癖によって、歪んでしまう赤ちゃんの頭。
頭の形を整える方法として、近年、注目されているのがヘルメット治療です。
ただ「頭の形は大きくなったら自然に治る」
「髪が伸びれば気にならなくなる」
という意見も聞きますよね!
ヘルメット治療は、本当に必要なのか?
頭の歪みは、子どもの生育や体へ影響するのか?
について、まとめました。
また、我が家でヘルメット治療を選択した理由についてもお伝えします。
ヘルメット治療は必要?不要?
赤ちゃんの頭の歪みを治すヘルメット治療は、必要なのでしょうか?
どのくらいのレベルなら、治療を検討するのでしょうか?
ヘルメット治療をする人が増加
赤ちゃんの頭の形に悩む人は、実は多いです。
『行列のできる法律相談所』にも出演されていた大渕弁護士もその一人だったそうです。
これまで頭の形を整える方法としては、音を鳴らして赤ちゃんの注意をひきつける方法や、就寝時のドーナツ型の枕を使う方法などがあります。
これらの地道な方法に加えて、近年ではヘルメット治療という選択肢が増えました。
日本でヘルメットを使った頭の矯正治療ができるようになったのは、ここ数年でヘルメット治療ができる施設は、全国で数箇所しかありません。
我が家も一番近い施設が隣県で、新幹線や電車で治療に通います。
頭の変形の種類
ヘルメット治療に有効なのは、病気が原因ではない頭部の変形です。
変形の種類は大きく3つに分類されます。
短頭症
短頭症は、顔の幅が広く、頭頂が突出し、後頭部は平ら。
いわゆる絶壁といわれる状態です。
斜頭症
斜頭症は、片方の後頭部が突出し、もう片方が平らな状態です。
長頭症
長頭症は、顔の幅が狭く、額か後頭部が突出しています。
ヘルメット治療は必要はない、という意見
日本でヘルメット治療が始まったのは、数年前からです。
医師の間でも、この治療方法のを知らなかったり、その効果に懐疑的な人もまだまだ多いです。
ヘルメット治療は必要ないという意見をまとめました。
頭の歪みは自然に治る
頭の歪みは自然に治るから、治療しなくてよいという意見です。
実際に、先輩ママさんに話を聞くと、「うちの子も昔は頭の形が悪かったけど、気がついたら丸くなっていたのよ。今では周りの人から褒められるくらい」など、丸くなった人もいます。
生活習慣で治すことができる
向き癖による頭の変形であれば、向きにくい方向に頭を向けるようにしてあげることで、変形が治る可能性があります。
外側から向きにくい方向に頭を向けさせることを、「積極的体位変換法」といいます。
積極的体位変換法
ドーナツ型になった枕や、体の向きを固定するマットレスを使う方法もこれに入ります。
ただしドーナツ枕やタオルを頭に挟む方法は、就寝時に体が動くとずれてしまうため、大きな効果は期待できません。
また、顔の近くに物を置いたり、体の向きを固定したりするのは、窒息等のリスクもあります。
髪が伸びれば気にならなくなる
自然に、または積極的体位変換法で治らなかったとしても、髪が伸びれば頭の形は気にならなくなるという意見もあります。
実際にヘルメット治療を受けるのは、男女で見ると男の子の方が圧倒的に多いのだそうです。
坊主だと頭の形がわかりやすいですが、髪が長いと見た目ではまったくわからないということもあります。
ただ、コンプレックスは本人にしかわかりません。
髪が伸びれば気にならないと言っても、「ポニーテールが似合わない」「好きな髪型にできない」等、コンプレックスを持つ人もいます。
頭の形が悪いことによる生育への影響は?
仮に頭の形に歪みが残ったとして、見た目以外になにか影響はあるのでしょうか?
斜頭症と発達との関係
これまで日本では、向き癖による頭の変形は、成長の発達や機能障害の原因にならないと考えられていました。
しかし、近年の研究で、頭の左右の大きさに歪みを生じる斜頭症と発達遅滞との関連性が注目されています。
日本形成外科学会は、形状誘導ヘルメットを医療機器として取り扱ってほしいという要望を厚生労働省に出しています。
2014年に行われた「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会について」では、下記のように説明がありました。
年齢、性別、社会経済的境遇が同等の、変形性斜頭が認められる 237 児及び認められない 235 児について、Bayley 乳幼児発達検査(BSID-Ⅲ)に基づき比較したところ、前者で運動領域において 10 ポイント、認知及び言語領域において 5 ポイント低い結果であった。変形性斜頭は、神発達遅延を必ず生じるものではないが、リスク要因であると報告されている。
少し補足をすると、斜頭症にも軽度~重度まであります。
重度の斜頭症では、頭蓋骨内の右脳・左脳の成長に差が生まれ、それによって運動領域や言語や認知領域に影響を及ぼす場合があるのではないかという報告です。
ただ、こちらの報告にもあるように、斜頭症が必ずしも発達に影響を及ぼすというわけではありません。
また、ヘルメット治療の有用性については、
また、従来の乳幼児の頭位を変えたり、円座等を使用したりする治療は、有効な治療法とはいえず、腹臥位を取らせることに対しては、窒息等の一定のリスクがある。(中略)本品(形状誘導ヘルメット)を導入することで、筋性斜頸に伴う頭蓋変形はもちろん、その他の頭蓋変形に対して簡便で安全、より効果的な治療が可能となり、患児・保護者の肉体的・精神的な負担の観点から、既存の治療法よりすぐれていると考えられることから、医療上の有用性は B と判断される。
と、まとめています。
従来の方法で、頭の形を整えようとすると、特に月齢が小さいうちは、保護者が付きっきりでやってあげないといけません。
また、睡眠中も頭の向きが気になって…という話も聞きます。
それが、ヘルメットをかぶるだけで良いなら、保護者としては精神的にも肉体的にも楽になりますよね。
その他の影響
また、重度の斜頭症の場合、左右の耳の位置や目の大きさに違いが出ることがあります。
左右差によって、将来的に噛み合わせに影響が出ることを指摘する専門家もいます。
身体への影響はまだ研究段階
日本では、まだまだ「頭の変形は美醜だけの問題」「ヘルメット治療は美容整形のようなもの」という考え方が、医療関係者の間でも主流です。
ヘルメット治療をする人がなぜ増えているのか?
海外では、日本よりも赤ちゃんのヘルメット治療が浸透している地域もあります。
アメリカやヨーロッパなどです。
これは、ヘルメット治療の認知が増しているだけでなく、頭に歪みがある子どもが増えたことが背景にあるようです。
米国で斜頭症の乳児が増加
米国では1992年より、SIDS(乳児突然死症候群)の予防として、乳児は仰向けで寝かせようという運動が展開されました。しかし、仰向け寝によって、後頭部の同じ面が長時間圧迫され、後頭部の頭蓋変形が増加してしまいました。
それによって、ヘルメット治療の需要が高まったと考えられます。
米国でリモルディングヘルメットが医療用具として認定
1998年、FDA(米国の厚生労働省にあたる機関)は、リモルディングヘルメット(ヘルメット治療に使用するヘルメット)をクラスⅡの医療装置と定め、厳しい規制基準を設け、製造販売には「510(k)」と称される認可が必要になりました。
日本でも一部の病院で取り扱いを開始
日本でリモルディングヘルメットを扱う会社は、数社しかなく、その多くは米国製です。
リモルディングヘルメットは、オーダーメイドで作成されます。
提携の医療機関での適応診断と、専門機器によるスキャニングが必要です。
頭の形が固定化するまでが大事
確かに向き癖による頭蓋変形は、寝返りやお座りが出来るようになると、同じ体勢で寝る時間が短くなるので、改善する可能性があります。
しかし、症状が重い場合、寝返りができるようになった後も、平らな面を下にした方が安定するので、その向きで寝てしまいます。
睡眠中にずっと同じ場所に圧力がかかると、いくら日中に動き回ったとしても変形した状態が固定化してしまう恐れがあります。
頭の形が固定化した後の治療は、基本的には外科手術しかありません。
ヘルメット治療は、欧米での認知度は高く、親よりも先に小児科でヘルメット治療を勧められることもあるのだそうです。
ヘルメット治療をすることにした理由
私の息子もヘルメット治療を行うことにしました。
歪みが気になったので、生後4ヶ月のときに専門外来でヘルメット治療の適性診断を受けたところ、短頭症(レベル3:中度)と斜頭症(レベル4:重度)と診断されました。
これまで試してみたこと
息子は生まれた時から頭が変形しているような気がしていました。
ただ、出産した産院でも小児科でも「大丈夫」ということしか言われず、その度に安心していました。
しかし、3ヶ月になっても、4ヶ月になっても歪んだままでした。
尖っていた頭が、多少丸くなったかな?という程度です。
ドーナツ型の枕も試してみましたが、目を離したすきになにかあったら…と、不安で、数回しか使用しませんでした。
向きにくい方向から、声をかけたり、家族の顔が見える方向に寝かせたりもしましたが、向いたのはそのときだけ。
起きている時間のほとんどは、真上か向きやすい方向を向いていました。
寝ている時に、そっと頭の向きを替えることも行いましたが、起きてしまったり、寝心地が悪いのか、いつの間にか元の向きに戻っていました。
ヘルメット治療を発見
頭の歪みについて調べているうちに知ったのが、ヘルメット治療でした。
と、思っていました。
治療を受けているお子さんと息子の頭の形を比べたり。
息子は、反対側にも顔を向けられるし、大丈夫だよね?と、自分に言い聞かせたり。
しかし、ヘルメット治療ができる期間は限られています。
対象月齢は生後3ヶ月~18ヶ月までです。
また、頭の成長スピード的には、治療の開始時期は早いほど、短期間での治療で済むということを知り、
と、検査を受けてみたら、割と重度だったというわけです。
ヘルメット治療をするにあたっての問題点
ヘルメット治療するにあたって、いくつか問題点がありました。
お金の問題
まずお金の問題です。ヘルメット治療は、保険がきかない自由診療のため全額自己負担になり、トータル40万前後かかります。
我が家にとって、ポンと出せる金額ではありません。
ヘルメット治療にかかる費用について、我が家の場合を計算してみました。
赤ちゃんのストレスについての問題
ヘルメットを被るのは息子自身です。
ずっとヘルメットをかぶらせるなんて、すごくストレスがかかるのではないか…と、心配でした。
ただ、適応診断で聞いてみると、赤ちゃんはすぐに慣れるから大丈夫!とのことでした。
通院の問題
ヘルメット治療は、購入して終わりではありません。
定期的に、2~4週間毎に調整のために、専門機関に通わなければいけません。
それを数ヶ月間続けることになります。
肌トラブルの問題
1番心配だったのは、肌トラブルの問題です。
ヘルメット治療では、大なり小なり肌トラブルは覚悟した方が良いようです。
また、ヘルメットは被りっぱなしではなく、1日数回外して、肌状態をチェックします。
肌が敏感な子の場合は、クッション材をヘルメットに巻きながら使用します。
それでも肌トラブルが起きたら、皮膚科を受診。
治らない場合は、数日お休みを挟みます。
【追記】
始めて2週間は、やはり汗疹が頻繁にできました。
ヘルメット治療の効果について
という淡い期待もなかなか捨てられませんでした。
完全に治らなくても、気にならない程度になれば…。
ですが、実際に治るか治らないかは、時間が経たないとわかりません。
病院でも言われたのが、「ヘルメット治療ができるギリギリになって来られる人も多いんです」と。
赤ちゃんはどんどん成長します。
大きく成長するタイミングで治療に入るのと、成長がゆるやかになってから治療するのとでは、治療にかかる期間も効果も違います。
息子にヘルメット治療を受けさせることに決めた理由
夫と話し合い、我が家はヘルメット治療することにしました。
もし、ヘルメット治療を知らないまま子供が大きくなっていれば、「そういう方法もあったんだね」と、思いますが、治療する選択肢があるのにやらなかったら、後々後悔してしまうのではないか。
ヘルメット治療した人の口コミを見ると、皆さんやってよかったと、おっしゃっているのも希望が持てました。
【追記】
ヘルメット治療の経過を記事にしました。
おわりに
実際に治療をした方がよいかどうかは、その子の状態によると思います。
軽度の歪みであれば、自然に丸くなっていくこともありえます。
また、時間や手間はかかりますが、積極的体位変換法でも頭の歪みは治せるという報告もあります。
気になる場合は、専門の外来で頭の測定をやっていただけますので、こちらを受診するのも1つの方法だと思います。
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